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2024.10.14 部員ブログ

『尽力』(3年 中村美桜 )

ホームページをご覧の皆様、こんにちは。

 

次肩が外れたら終わり、がトレーナーとの合言葉。そんな生死の狭間を生きている小熊藤子からバトンを受け継ぎました、理工学部3年の中村美桜と申します。藤子とは今年から共に幹部の一員となり、2人で過ごす時間が長くなりました。その度にチーム状況について議論したり、藤子の肩コンディションについて話したりするのですが、今年は特に彼女の責任感の強さに圧倒されました。隣にいる時間が長い分、尊敬の念が絶えません。

いつもありがとう。ラスト1年、全力で駆け抜けよう。でも、肩だけは大事にして。

 

さて、早速本題に入りたいと思います。2024年という1年は、私にとって、後にも先にもない大きな転機が訪れた1年でした。現在私は、21年間という人生の中で最大の挫折、いや、挑戦と向き合っています。感情の起伏も波乱万丈だったこの1年を振り返り、ソッカー部人生ラスト1年、本気でサッカーという競技に向き合えるこの残り少ない時間をどう過ごすか、心に留めていることを書き連ねていこうと思います。

拙い文章ではございますが、最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 

―――――――

2023年10月29日。偉大なる4年生が引退し、新チームが始動した。それと同時に、チームはGK不在という危機に陥った。それから約5ヵ月間、GKを選出するためのミーティングを何度も行った。長時間にわたる苦しい話し合いは、思い出したくもないくらい辛い時間だった。沖縄遠征中、2人部屋の1室に集まり、部員全員から自分の名前を口にされた時のことは今でも鮮明に覚えている。これまでの話し合いの予兆からも、私が指名されることを想定は出来ていた。しかし、いざそれが口に出され、確固たる事実になると現実味が帯びてきて、ここからどう挽回すればいいのか、わからなかった。

 

GKをやりたくない。

フィールドプレーヤーをやめたくない。

 

それが正直な気持ちだった。

友人、家族、たくさんの人に相談し、その度に私が選ばれないための理由を探してはノートに書き留め、ミーティングの際に口にしてみたが、私の想いが叶うことはなかった。

フィールドプレーヤーとしてこれまで築いてきた道のりを、壊された気がした。美桜のためなら頑張れる、美桜が頑張っているなら自分も頑張ろうと思える。そんな言葉をかけられたときは嬉しい気持ちもあったが、それがGKになる理由になってしまうのかと、これまでの行動を悔んだりもした。

ソッカー部での目標、ソッカー部で成し遂げたいこと、ソッカー部に入部した理由。

それらはすべて小中高と積み上げた私のサッカー人生の集大成を表したものであり、自らのポジションコンバートによって達成できるものではなかった。

入部してからいろいろな自分の絵を想像してきたつもりだ。だが、その中に私が赤色のユニフォームに袖を通している姿はなかった。

 

それでも、決断するしかなかった。自分がGKになる。慶應の守護神としてピッチに立つ。そう決断するしかなかった。そう思えた最大の理由は、同期の存在である。

 

芹、葵、藤子。この3人からGKをやってほしいと言われたら、断ることなど到底無理だった。この2年間、3人にどれだけ助けられたか。3人の頑張りを見て、どれだけ自分は不甲斐ないと思わされたか。3人がどれだけ悩んで、それでも私を指名してくれたことを誇りに思わずにはいられなかった。私たちが掲げる4人の目標は、全員で同じピッチに立つこと。それは、フィールドプレーヤーでなくても達成できる目標だった。

 

過去2年間、望み続けて達成することのできなかった一部昇格という目標を、今年こそは達成させたい。入部当初想像していた道からは大きく逸脱することにはなるが、最終的にそれがチームの目標を達成することに繋がるのであれば、それは私が一番望んでいる形であることに変わりはない。

 

そして、やると決めた以上、自分が出来る努力、尽くせる力、費やせる時間すべてを捧げようと決意した。

―――――――

 

決意から程なく1ヶ月で、公式戦デビューを飾った。右も左も分からないまま、まだ慣れない新品のキーパーグローブをはめてゴールの前に立っていた。結果としては、3失点を喫し、さらにはデビュー戦にして人生初PKを受けるという、散々な一日だった。

 

開幕戦から現在までの時の流れはまさに刹那だった。

現時点で、15試合もの試合に出場したが、その内無失点で終えられた試合はわずか2試合のみ。残りの13試合で23失点という悲惨な結果を出した。試合を重ねるごとに自分の成長を感じるものの、それ以上に、失点を振り返ると全てに実力不足という文字が頭の中で反芻され、チームが得点を取っても、それを守り切ることができないやるせなさを覚えた。チームとしてGKがいない事態を救い、ヒーローになりたいと思っていた十分な気合とは裏腹に、結果は当たり前のようについてこなかった。

 

普通なら防げた失点。昨年度まで正GKとして慶應のゴールを守っていた明日香さん(R4卒)だったら難なくキャッチしていたであろうシュートが、ゴールに入ってしまう。ビデオを見返したら、なんでこんなボールが取れないのだと、自分を責めるしかない失点に、言葉を失う毎日。対戦相手からは穴だと言われ、ハーフウェイライン近くからでもシュートを打たれる、そんな惨状である。何よりも悔しいのは、それに迎え撃とうとする姿勢はあれど、全くもって太刀打ちできないことだった。

 

一部昇格の望みがかかった大一番で迎えた後期第4節の立教戦。幸先よく前半のうちに先制点を取り、主導権も慶應側にあったその試合で、後半、立て続けに2本の直接FKを決められ、敗北。一部昇格の夢が絶たれた。2本のFKは、どちらも私を狙ったボールだった。2失点目をしたとき、私は試合中であるのにも関わらず、涙を流してしまった。GKというポジションはなんて残酷なのだと、その時に初めて思い知った。どれだけビルドアップに参加しようと、どんなにいいスルーパスを出そうと、男子部の健くんのようなスーパーゴールを決めることができない限り、自分で得点を生み出すことはできない。自分のせいで失点しても、得点を取ってくれ、と前線の選手に望みを託すことしかできない。自分で自分のミスを取り返すことができない。そんな酷なポジションを担うことがチームへの貢献になっているのかと不安に駆られ、あの場でGKとして立っていても何もできないことが、みんなの期待に応えられないことが、悔しくてたまらなかった。

 

そんな自分に滅入っていたとき、ふと前を向いたら、みんなが必死にゴールへ迫っている姿が目に焼きついた。そして、我に返った。下を向いている時間などないのだと、自分を叱った。私には、私のミスを取り返そうと必死に戦ってくれる仲間がいるじゃないか。毎日同じ時を過ごし、辛いことも苦しいことも共に乗り越えてきた仲間が、信頼できる仲間がすぐそばにいるじゃないか。仲間を信じないで何を後悔しているのだと、自分を律した。GKとして私を選出する代わりに、走り続けると言ってくれた仲間がいる。そんな仲間を横に、自分がピッチに立っている以上、やらなければならないことは明確だった。

 

私の原動力は仲間の存在にあるのだと、その試合を通して気付かされた。

―――――――

 

自分で下した人生最大の決意から半年、失敗の連続でした。それでも、いつか成功を掴み取れることを信じて、最後まで出せる力を全力で出し続け、ひたむきに努力を惜しまず、ソッカー部に身を尽くし、残り1年にすべてを懸けることをここに約束します。

 

幸いにも、私の周りには、その決意を十分に体現できるような環境が整っています。横を見れば、11人もの優しくて人想いなGKコーチがいて、毎日私にアドバイスの言葉をかけてくれ、GKというポジションの魅力を教えてくれます。試合では、どんなミスをしても「よくやった」、「ナイスキーパー」と必ず心温かい言葉をかけてくれる慶應FAMILYのみなさんがいます。そんな私は、どんなチームよりも幸せな環境にいると自負しています。この環境に感謝し続け、最終学年となるラストイヤーは飛躍して成長できるよう、尽力したいと思います。

 

次は、今年から共にGKへ転向し、日々切磋琢磨し合いながら成長し続ける劔佳那にバトンを託します。正GKがいない中、キーパーコーチがいないときは初心者ながら2人で練習メニューを考え、課題を抽出してはそれに向き合い続けるという毎日を過ごしてきました。辛い日々が続いてもお互いに励まし合えたからこそ、ここまで弱音を吐くことなく走ってこられました。普段はあまり本音を曝け出すことのない彼女が、最後に何を綴るのか楽しみです。

 

纏まりのない文章ではございましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。

今後とも、慶應ソッカー部女子へのご支援ご声援のほど、よろしくお願いいたします。

 

 

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