2025.10.30 引退ブログ
『答え合わせ』(4年 中村美桜)

ホームページをご覧の皆様、こんにちは。
今年度主務を務めさせていただいております、理工学部4年の中村美桜です。
我らが副将、守部葵からバトンを引き継ぎました。葵、紹介ありがとう。このチームに欠かせない存在である葵は、今年1年、とにかくチームを第一優先に考えて行動してくれました。そんな葵から私は、本気で人と向き合うことの大切さを教わりました。もともと、感情を表に出すのが得意ではない私はこれまで、誰かとぶつかりそうになると自分の意見を相手に合わせることで、人と向き合うことから逃げていました。葵と出会い、本音でぶつかり合えたからこそ、チームの目標を本気で達成したいと思えたのだと思います。4年間、本当にありがとう。引退しても、いつも通り太楼でお昼を食べ、カラオケで思う存分歌いましょう。
4月のリーグ戦開幕前、藤子の『賢く泥臭く、虜にさせる』と題した今年1年に懸ける想いを綴った文章から始まったこのリレー日記も、終わりが見えてきました。4年間、この素晴らしい組織に身を置き、大好きなサッカー人生の幕をここで閉じられることを誇りに思います。引退を目前に控えた今、ソッカー人生を振り返って感じることを素直に綴らせていただきます。拙い文章ではございますが、お時間があるときに読んでいただけますと幸いです。
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引退まで残り数日。そんな言葉をどこか上の空で聞いていたのも最近のこと。その日が現実になってしまうことが怖く、切なく、寂しい。16年間、私のすべてを捧げてきたサッカーという競技から退く。それが、どれほど空虚なものであるかは、なくなってから初めて気が付くのだろう。それほどまでに、私はサッカーに没頭していた。
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何を犠牲にしてでもこのソッカー部に少しでも貢献したいと思い始めたのはいつからだろうか。高2の春に初めて練習参加し、レベルの高い環境でサッカーができることに幸せを感じ、この組織に入りたいと強く思ったときか。大1で同期との圧倒的な差を目の当たりにし、この先の4年間に不安と期待が入り混じった感情を覚えたときか。はたまた、大3で人生最大の決断となるGKに転向してからだろうか。あるいは、大4で最高学年になり、結果を残さなければならないという使命感と焦燥感に駆られたときか。
いずれであるかもしれないし、いずれでもないかもしれない。ただ、今振り返ると私がこんな思いを持つようになったすべての原点は、この組織に入り、本気でサッカーという競技に向き合えたからこそ芽生えた感情であったことに気が付く。
1年目
“同期”という存在のありがたさを知り、同期との差が自分の闘志に火をつけてくれた。試合に出ても何も貢献できない日々。方や隣ではチームの要として欠かせない存在感を放つ同期の姿に悔しさと尊敬の念が絶えなかった。そして、その年の最終戦である早慶戦の次の日、最愛の同期の内1人がこの部を去る決断をした。何も貢献できていない私がこの部に残り、チームを牽引していた同期がいなくなる事実を突きつけられ、自分がこの組織に残る意味を探した。
2年目
初めて、人のために頑張ろうと思った。自分を犠牲にしてでも誰かのため、チームのために時間を割き、本気で目標達成を実現しようと鼓舞してくれる人に対し、この人達のために目標達成をしたいと強く思った。チームに対して目を向け、ピッチ外でもチームの勝利のために動こうと、些細な変化にも気を遣い、先輩方から刷り込まれたソッカー部員としてあるべき姿を体現しようと努めた。「隣の人のスプリントを無駄にするな。」テソンさんがこの年、再三伝え続けてくださった言葉。誰かのために頑張れるチームは強い。この年、初めてそれを実感した。それでも結果は全くついてこなかった。いくら努力の過程を肯定しようと、結果を出さなければ意味がない。そういった勝負の世界を私達は生きているのだと、改めて思い知らされた。1部昇格の望みが消えた瞬間に尊敬する先輩方が泣き崩れる姿を、ただただ茫然と眺めることしかできなかった。人のために頑張ることが、大きな原動力になることを知った。同時に、どれほど地道に努力を重ねても、成果へと結びつかない厳しい現実があることも知った。
3年目
1部昇格のために、チームのために、やれることはすべてやろうと誓った1年。1年生の頃、同期と立てた「インカレ出場」という目標を達成するために、残された道はこの年に1部へ上がるしかなかった。チームの勝利のために、費やせる時間すべてを費やした。それでも、結果は残酷なまでに何もついてこなかった。1部昇格の望みが消えた立教戦での敗北に、人生で初めて悔し涙を流した。ここまでやって、これ以上何をやればあの失点を防げたのか。自分ができること、費やせる時間をすべて費やした結果がこれ。だから、心底悔しかった。全力を尽くし、やるべきことをすべてやって初めて、結果に対して一喜一憂できるのだと、その時に学んだ。
4年目
結果に貪欲に。結果にこだわる。結果を出さなければいけない。そのように、シーズン前に同期と話した。何よりも結果を意識する。全員がこのチームのために、同じ熱量で戦ってもらいたい。上級生、下級生、1年生など、関係ない。少人数である私達の強みを最大限に活かし、このチームを創る。1日1日の練習にこだわりを、一本のパス、ワンタッチにこだわりを持ち続ける。最高学年として、3年間同じ目標を立て続け、達成できなかった悔しさを味わっている代として、みんなに求め続けた。
そして、4年目にして初めて、結果としてそれが少しずつ形になってきた。14勝2分1敗。リーグ開幕前、誰がこんな戦績を予想しただろうか。全員が勝利を信じて、私達が目指すチームを形創ろうともがいた結果だった。この戦績を出すことは当然のこと。そう思えるくらい、ここまで毎日を創り上げてきた。その自負を全員が持っている。ただ、まだ何も成し遂げていない。勝ち点を44まで積み上げたという結果を出していても、目標を掴み取ったわけじゃない。サッカーという結果を求められる世界に人生を懸けている以上、目標を手にしなければここまでの戦績もすべて意味のないただの数字だ。
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大3の春にGKへ転向した。14年間続けてきたフィールドプレイヤーを辞め、チームの目標を達成するために、新たな挑戦に挑む決意をした。すべては“1部昇格”のため。大1、大2と2年間同じ目標を掲げ、ピッチ内外でできることはすべてやったつもりだった。それでも、結果を出すことはできなかった。組織として2年半ぶりの勝利を挙げ、喜びを分かち合ったのも束の間、結果は大1時リーグ5位、大2時リーグ6位と、入れ替え戦圏内にも入れなかった。上級生として迎える3年目。私はどの立場でどのようにチームを勝利に導けばいいか、模索し続けていた。周りを見渡せば、技術レベルの光る後輩がいて、試合でチームを勝たせる同期がいて、大怪我から復帰し背中で示し続けてくれる4年生がいた。そんな中、私はどこで自分の存在意義を発揮し、チームを引っ張っていくべきか。自問自答の日々を繰り返していた。そして、新チームが始動した。そんな矢先だった。最も恐れていた、自身のGKへの転向に現実味が帯びてきてしまった。覚悟はしていた、つもりだった。だが、いざ自分が本当にGKに転向するときが来るかもしれないと思うと、恐怖に襲われた。やりたくない。そんな自分の意志とは裏腹に、ミーティングを重ねるごとに自分がなるしかないと思わされる。それでも、覚悟を決められなかった。どうしても、自分の限界に挑戦したかった。このレベルの高い環境で、自分がどこまで通用するのか、1、2年生で費やした時間を、結果で示すのは今年だと意気込んでいたからこそ、この決断を下すのは、その挑戦から逃げることと同等だった。積み上げてきたものが一瞬にして崩れるとはこういうことかと、悟った。
でも、それは違った。
積み上げてきたものがあるからこそ、私を信じてみんなが選んでくれた。これまでの形とは全く違えど、超えるべき高すぎる壁を与えてくれた。その壁に挑戦することができる権利を、みんなが与えてくれた。
「美桜のためだから頑張れる」という言葉に救われた。「美桜ならできると本気で思っている」と期待してもらった。それまでの努力を誰かが見てくれていたことを知った。GKに転向することで、自分の力をチームに還元する意味に、気付かされた。自分の存在意義を、教えてもらった。
そして、大きな覚悟と責任を持ち、決断した。
この組織の目標を実現するために。すべては、“1部昇格”のために。
覚悟を決め、GKに転向するということをテソンさんに相談しに行った際、テソンさんからかけていただいた言葉を聞いて、この決断を正解にしようと、心から決意した。
0からのスタートだったGKトレーニングは、正直、心底楽しかった。女子部にはGKコーチがいなかったことから、男子部の練習に参加させてもらうこととなった。当時、男子部のGKは10人もいたが、10人全員が私の決断を正解にするために、私を鼓舞し、GKとしてのすべてを教えてくれた。レベルの高い男子部の練習に初心者の私が入ることで練習の質が下がるのは至極当然であるにも拘わらず、嫌な顔一つせずに付き合ってくれた。女子部の練習には毎回誰かがコーチに来てくれ、私にGKとしての基礎を叩き込んでくれた。試合前日には必ず応援の声をかけてくれ、期待してくれた。できなかったことが少しでもできるようになると、すべてを肯定してくれた。私の努力を認めてくれた。
そして、私をGKに推薦してくれた同期、先輩、後輩は、ミーティングの際に伝えてくれた通り、それまで以上にプレーに責任を持って戦ってくれた。特に、同期の3人の背中に救われた。芹が1年生の時に理想像として掲げていた攻守で貢献してチームを勝たせるという目標を実現し、4年の意地を見せてくれて、葵が本気でチームと向き合い、厳しくも愛のある声を出し続け、長いリハビリを乗り越えてピッチに戻ってきてくれて、藤子が誰よりも私の決断を正解にするためにゴールを守り、チームの先頭を走り続けてくれたから。その期待に応えたい、応えなければならないと心を震わせた。
とにかく、時間を費やし微々たることでもうまくなるためなら何でもやる。それが、みんなからの私への使命だと、受け取った。「美桜が頑張っているから頑張ろうと思える」と言ってもらったこの言葉の期待に応えるには、かけられた期待以上のパフォーマンスを見せなければいけなかった。
だから、とにかく練習した。努力を怠らずに愚直に、真面目に、少しずつでもいいから、成長した姿を見せよう、と。支えてくれるみんなの期待に応えられるように。GKになるという決断を正解にするために。
女子部練、男子部練、自主練。グラウンドに何時間いるのだと思われるくらい、下田に居続けた。その努力が報われるどうかは、蓋を開けてみないとわからない。それでも、本気でこの試練に挑み、向き合ったと胸を張って言えるくらいには、やり尽くすことができたと思う。
この決断を、この努力を、正解にできるかできないかは、残りのあと1試合に懸かっている。だから、最後まで、力を貸してほしい。試合終了のホイッスルが鳴り響くまで、自分達を信じて、テソンさんを信じて、戦おう。そして、必ず優勝を掴み取ろう。
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最後に。
4年間、私は周りの人に本当に恵まれました。新たな挑戦を応援してくれ、最後まで私のわがままに付き合ってくださった皆様にお礼の言葉を伝えさせてください。
社会人スタッフの皆様
テソンさん、どんな結果であっても、最後まで選手を信じ、目指すべき指標を示し続けてくださいました。決断を正解にするために、最後までもがき続けます。
たかさん、福本さん、彩花さん、八木さん、中田さん、選手を第一に考え、自分の時間を削ってでも私達に尽くし、信じ続けてくださいました。
本当にありがとうございます。必ず結果で恩返しします。最後まで、よろしくお願いいたします。
GK Familyの皆様
髙橋さん
右も左もわからない状態からの私に、基礎からすべてを叩き込んでくださいました。髙橋さんに私の成長を見せることが、1つの大きな原動力でした。練習の中で、GKの楽しさを見出すことができたのは髙橋さんのおかげです。感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。
健君、根津君、我空君、千葉君
GKの魅力、極意、楽しさ、すべてを教えていただきました。健君にGKが勝たせる試合を、根津君にGKとしての意地を、我空君に自分を信じることを、千葉君に努力することの意味を教えていただきました。1年弱という短い時間でしたが、その期間で吸収できるものはすべて吸収しようと努力したつもりです。最後まで、決断を正解にするまで、努力し続けます。
潤太君、快君、テイラー君、大次郎君、計盛君、桂匠君、健翔君、大地君
みんなのおかげで、毎日の練習が本当に楽しく、充実し過ぎていました。足手まといなのにも拘わらず、練習中でも練習外でも常にアドバイスをくれ、私の成長を信じてくれるみんなに助けられる毎日でした。どの大学よりも間違いなく恵まれた環境にいさせてくれたことに本当に感謝しています。
潤太君の計り知れない重圧を背負いながらチームを救う姿に感銘を受け、快君の素直さと優しさに温かさをもらい、テイラー君の何でもそつなくこなせる器用さを羨望し、大次郎君の懐の広さと練習に対する意識の高さに心が震わされ、計盛君の情熱と気合いに元気をもらい、桂匠君の寄り添ってくれる優しさに救われ、健翔君のサッカーに対する実直さに、大地君の密かに秘める熱い想いに、希望をもらいました。
私からみんなに残せるものなんて何一つなかったけれど、誰よりもみんなのことを応援していることは確かです。
彩夏
マネージャー陣の中で絶対的な信頼を置かれ、みんなから頼られる彩夏を見ると、なぜだか誇らしく感じていました。4年間、いついかなる時も秒速で返信をくれて本当に助かりました。お互い、最後までやり切ろう。
梨帆
3歳の頃に出会った梨帆とここで再会できたことを奇跡だと感じています。梨帆の実直な瞳に、溢れ出る笑顔のまぶしさに、いつも救われていました。
GFAソッカー部のみんな
小学生の頃、シンガポールの地で毎週切磋琢磨して一緒に練習していた日々を思い返すと、この下田の地にみんなが集まっていることは、信じ難い事実です。何も考えずにサッカーを心の底から楽しみ、小学生ながら苦楽を共にしたみんなのことを、心から応援しています。
親愛なる友人のみんな
みんなと過ごす時間が私の心の支えになっていました。どんな時でも応援してくれ、立場は違えどそれぞれの場所で活躍しているみんなは私の頑張る原動力でした。これからも一生の付き合いでお願いします。
後輩のみんな
3年生、私をGKに選出してくれて、信じてくれて、ありがとう。みんなの覚悟と結果を追い求める姿がチームを強くしてくれました。
2年生、今年1年は2年生の責任感の強さに何度も救われました。
1年生、チームに新しい風を吹かせ、常にみんなを明るく照らしてくれました。
ラスト1試合、何が何でも掴み取りましょう。みんな最後まで、頼んだよ。
同期
今の私を形作ってくれ、ここまで来られたのは、紛れもなく3人のおかげです。全員が同じ熱量でサッカーと向き合い、それぞれの立場でチームに貢献しようともがき苦しんだ4年間をみんなと過ごせたことが人生の財産であり、一生の宝物です。必ず、優勝して終わろう。
家族
GKに転向するか否かで葛藤していた時、一番脳裏に浮かんだのは家族に活躍している姿を見せたいという想いでした。私の決断を信じ、一番近くで私の努力を応援し支えてくれ、存分の愛を注ぎ続けてくれてありがとう。最後まで、声を大にした声援、よろしくお願いします。引退したら、少しずつ恩返しさせてください。
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この組織には、どんな大きな壁にぶち当たっても、その挑戦を応援してくれ、一緒に乗り越えてくれる仲間がいます。小さな努力でも、必ず見てくれている人がいます。
主務を務めさせていただいたことで、ありがたいことにOB・OGの方々と関わる機会が増え、男子部だけでなく、女子部にも声援を送ってくださる方々が山ほどいらっしゃることを知りました。試合になれば、大きな声を挙げて誰よりも私達を信じ、勝利を喜んでくださる保護者の方々がいます。自分達の活動だけでも忙しいのに、女子部のために時間を費やしてくれる男子部の皆さんがいます。そんな環境に恵まれたこの組織で、4年間本気でサッカーと向き合い、サッカーを愛せたことがこの上ない幸せです。
私のサッカー人生に関わってくださったすべての方々へ、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
さて、それぞれの想いが乗った、重い、重いバトンをアンカーに渡す時がきました。最後を締めくくるのは、4年間慶應のゴールを守り続け、人一倍の責任感を背負ったTEAM2025の主将、小熊藤子です。藤子とは4年間、喜怒哀楽すべての感情を共にし、一緒に乗り越えてきました。特にこの2年間は、藤子の背中の大きさに何度も助けられました。円陣で、毎回最後に「無失点ね」と意気込んでハイタッチするルーティーンも、今週で最後だね。必ず無失点に抑えて、チームを勝利へ導こう。計り知れない覚悟と、責任と、使命を背負い、チームの礎を築いてくれた藤子が、最後にどんな言葉を綴ってくれるのか。楽しみです。
長く、まとまりのない拙い文章ではございましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。今後とも、慶應ソッカー部女子へのご支援ご声援のほど、よろしくお願いいたします。

